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『百歳の森をつくる。』~西粟倉森の学校の挑戦

わたしたちは今、岡山県の山あいにある『西粟倉・森の学校』とヒノキで作るハードチーズプレス機を一緒に開発しています。”学校”と言う名ではありますが、実は林業のベンチャー企業として日本中から視察の絶えない会社です。

 

この4月、大学で建築を学んだ女性が一人、この森の学校へ新卒で入社しました。

 

『村田真由』さん。

 

日本中どこでも選べたであろう就職活動で、西粟倉村を選んだ彼女。わたしたちのチーズつくりツールを担当してくださっているのも彼女です。

そんな若い彼女の目を通して垣間見えた楽しくてたくましい『森の学校』の挑戦とビジョンのお話を伺ってきました。

 

2015.11.23-30

2015.12.01-07

2015.12.08-14

2015.12.15-21

歳の森をつくる。

ーー 日本での木材価格が下がった理由は輸入材ですか?

 

村田:はい、そうです。例えば南米などの暖かい地域は森林の成長が早く出荷までの期間が短く低コストになります。またカナダやシベリアなどの森林は平地で間伐や出荷作業がしやすくコストが日本ほどかかりません。

 

ーー たしかにそうですね。

 

村田 一方、日本のような急傾斜な山では管理自体も大変です。コストもかかります。このようなことから、国産の木材には競争力がないと言う人がいます。

 

ーー はい。

 

村田 でも、林業に関しては輸出産業を育てるというよりも、これから如何にしてローカルな社会で利用されていくかがわたしはポイントになる気がします。

 

ーー 国内で利用と言う意味?

 

村田 はい。もちろん国内でもいいんですが、さらに狭く「地元」という意味のローカルでとらえています。 

 

ーー 地元の木は地元で使う。木の地産地消。だからグローバルな競争力を目標にしないと。

 

村田 はい。運送費もかからない地元で消費するための林。それが先ほどのオーストリアの事例の最大の魅力です。

 

ーー まず各地で管理をきちんとした森をふやすこと。そのために木製商品つくりからいい循環をつくろうとしてるんですね。

 

村田 はい。さらに今、間伐材の板建材をつかって社内で新しい「家」を作るプロジェクトも進んでいます。

 

ーー 家ですか!それも地元の木の家。楽しそうですね。

 

村田 この先、100年齢の木になれば大黒柱としての利用も出来ます。

 

ーー なるほど、100年齢で思い出しましたが、西粟倉村といえば『百年の森林構想』です。この話をお聞かせてください。

 

西粟倉 森の学校

村田 はい。これは2008年にはじまりました。今から7,8年ほど前です。

 

ーー はい。

 

村田 そのころ西粟倉の森の多くはちょうど50歳程度でした。2008年から50年後の2058年には100年の森林が出来上がっているはずだ。それを目指して西粟倉村で林業のいい循環をつくろうとしています。

 

ーー いわば、「百歳の森」。

 

村田 はい。それは材としての価値だけでなく、森自体が手入されているので、明るい森になるはずです。

 

ーー 明るい森。

 

村田 日差しをうけた下草のふさふさとした森。美しいだけでなく、そのおかげで有機物を多く含んだ地面が出来ます。

 

ーー はい。

 

村田 そうすれば川へも栄養分が届き始めます。そうすると虫も魚も自然と増えていくでしょう。

 

ーー あ、だから「きれいな川を目指す」なんですね。

 

村田 はい、そうなんです。

 

西粟倉 森の学校

ーー そうえいば、いま瀬戸内海でも50%以上、魚種によっては7割以上も漁獲高が減っているとニュースで聞いたことがあります(注5)。

 

村田 はい。

 

ーー もしかしたら手入れをして上流から供給される川の有機分が増えることでだんだんと回復されるかもしれません

 

村田 この村のお年寄りも、昔はもっと川で魚が取れたのにとよく話をしてくれます。

 

ーー 西粟倉は河川の最上流域ですね。

 

村田 そういう環境改善といった間接的な意味もふくめてこの「森の学校」の活動は意義が深いと思います。

 

ーー 本当にそうですね。最後に今若い移住者も多い西粟倉村ですが、その人気の理由は何でしょう?

 

村田 うーん、何でしょう。おそらく「定住しなくていい」、ということを前面に掲げているからではないでしょうか(注6)。たとえば林業、木工だけでなく木を使ったエネルギー利用など、将来日本各地で転用できる課題解決いっしょに試しながら挑戦していく場としての西粟倉村。一時的にでもいいですよという身軽さと寛容が魅力なんだとおもいます。

 

ーー そうですね。さらに今では移住からさらに拡大してローカルベンチャースクール(注7)なども西粟倉で行われていると聞きました。これからも一緒にお仕事できるのを楽しみにしています。きょうはお時間ありがとうございました。

 

村田:ありがとうございました。

 

 

(注5)http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2015/10/1025.html

(注6)移住者募集にも書かれていますhttp://nishihour.jp/challenge

(注7)西粟倉村のあわくら温泉で開催。http://nishihour.jp/challenge/lvs2015_01

西粟倉 森の学校

【後記】

若い村田さんの目を通してみた西粟倉・森の学校、いかがでしたでしょうか。小さな村だからこそできる理想を掲げて村全体で戦略的にすすんでいこうとする姿勢がわたしには伝わってきました。

 

かつて日本建築には千年齢の木を使うことは、さらに千年以上建物を持たせることであるという哲学があると聞いたことがあります。実際木の強度は切った後さらに向上していくそうです。一方でいまの日本の建築の寿命はあまりに短すぎることが気になっていました。この先西粟倉の「100歳の森」から100年、3世代にわたって利用できる家を作っていただけたらさらに意義深いとおもいました。

 

西粟倉村での新しい循環モデルが成功することで森林をもつ日本の多くの地域にとって良いサンプルになる、これがわたしたちが「森の学校と仕事したい」と思った理由です。これからわたしたちも微力ながらチーズつくりを通して面白いことが一緒に出来ればとおもっています。

 

 

株式会社 西粟倉・森の学校

 

 

 

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